さよならこまだもちゃん

わたしはどこに進みたいのだろうか冬のことでした。

あなたはお酒が好きでした。音楽を愛していました。学問を愛していました。ひとのきもちをいたいほど知っている人でした。はじめてわかりあえるひとに出会えました。

わたしたちは雪がすきでした。大雪がふるなかで、わたしたちは夢中で夜道を駆け抜けました。そのまま雪にうもれてしまいたい。

あなたの笑顔をはじめてみました。それは無邪気なものでした。

ふたりでぬくもりに身をゆだねました。まどろむあなたによりそうわたし。このままふたりでずっと遠くまでいけるのではないかと思いました。いえ、ずっと遠くではなく、このまま、そのまま。

私はあなたの強さを知りました。

「強引に腕を引っ張ってそのつよいまなざしでわたしを春につれてって 」

あなたの弱さを知りました。

「それからわたしはあなたの手を引いて、きたぐにの夏のここちよさをおしえてあげるから」

冬ごもり 芽が出ないわたし 強引な男 つよいまなざし いつもあなたの背中を見ていました 一挙一動にひかれておりました 

旅立ち 連行

春がくる、あなたはわたしをぐいと引っ張り

キスをする、抱きしめる

思えばわたしは自分のきもちを人に言えずにいたの、ずっとだれかの気持ちに耳を傾けて、「これが人間としてせいかいのみち」だと思ってきたの、わたしは自分のきもちなどなかったの

好きだと言ってしまえば楽なのに、わたしはずうっと言えないでいる

彼にお金を貸しました。「もういやだ」とおもいながら、屈託なく笑うあのひとの笑顔を見たいとおもった。

「恋愛の微熱でそれはひどい風邪をひいた」

キラキラとまばゆい光をはなつあの子がうらやましくて仕方がなかった。あのこになりたいと心から願った。わたしはふとんのなかでひとり、キラキラとしたわたしを思い浮かべました。けど、わたしはぬるまゆの中に沈む魚のままでした。

やはりわたしはこのことをだれにも言えませんでした。

はじめて伝えた「好き」のきもちは、嘲笑の闇に消えました。 ひとのことはなんでも知っているのに自分のことはなんにもわからないひとでした。

きっと「自分がいないほうが幸せになれる」と思っていたのでしょうし、私たちの関係は依存だったので、そのみちが正解だったのでしょう。わたしには幸福がありましたから、それを汚したくないと思っていたのでしょう。

じっと見ていました。ずっと好きだと伝えたら、驚いて、眉間にくしゃっとしわを寄せて、「ごめん」とだけ言いました。

彼は逃げました。逃げたのです。彼はわたしを置いていってしまいました。ここで歌うのが十四番目の月。

「あなたのきもちがよみとれないもどかしさ だからときめくの 愛の告白をしたとたんそれが最後 オワリガハナ その先は言わないでつぎからかける満月よりも十四番目の月がいちばん好き」

第一章、恋をした

第二章 苦しんでから思いを告げるまで

第三章 降られてから決別するまで

あのひとはきっと弱いのです。わたしのまっすぐな思いで彼を傷つけてしまった。

「自分は人に言えない闇がある」けれどそれは自意識過剰で、

太宰のような人をすっと救って立たせてあげられるようなわたしでいたい

大丈夫、わたしはずっとやさしいままでいるよ。よわいあなたにそんなことを思っていた。

人にぶちまけました。言えずにいた秘密を。けどそれはお道化のひとつで、わたしは本当のきもちを言えずにいたのです。本音を言うと嫌われてしまう、そのきもちだけが私をつくりあげるのです。本当のきもちよ、走れ、とまらないで

好きなのに、わかってもらえないことがさみしかった。ずっと思っていたのに、わかってもらえないことがさみしかった。わたしだって、ずっと苦しんできた。あなただけが苦しいだなんて言わないで。けど、あなたには苦しむ余裕というものがなかったのでしょう。お金の切れ目は縁の切れ目。

Togy magy

未来を夢見てあしたを迷走する都木マキのブログ。ひらがなとサブカルチャーが好きです。

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